予防健康創成型歯科医療について

現在医科では、慢性疾患の増加とともに、これまでの「病因を追求してそれを排除する病因追求型の医療」から、「症状の完全消失を目標としないで生活の質(QOL)の向上を目指す健康創成型の医療」の必要性が唱えられています。健康創成型医療を提案したA.Antonovskyは、病気と健康は明確に区別される対立的な現象ではなく、人間は常にその連続体の上を移動する動的な存在であることを強調しています。

模型で説明

生活の質(QOL)の向上を目指す健康創成型の医療

歯科においても、虫歯や歯周病は、現代の歯科医療の問題点で述べましたように、完治することは難しい慢性疾患としてとらえる必要があること、あるいは当院で専門的に治療している顎関節症も慢性疾患としての面を持っていることから、健康創成型医療的な視点から患者さんを診ていくことが求められてきています。そこで当院が目指す歯科医療の形を予防健康創成型歯科医療と考えました。

本当の意味での予防

予防が大事であるという考え方は以前からあります。しかし本当の意味で予防が行われていたかと言えば疑問があります。たとえば予防と言う名のもとに行われていた歯科検診は、新たな虫歯や歯周病を探し、早期発見・早期治療と言う考えのもとに処置を行っていたに過ぎないのではないでしょうか?

歯科検診では、細い針で歯を探り、詳細に虫歯を見つけ削って詰めて治療します。しかし、現在では虫歯を針でつついて見つけ、そこを削って詰めるのでは、虫歯はなくなりません。かえって虫歯をひどくしてしまう可能性さえあります。たとえ一時的に虫歯が治ったとしても再発すれば削った分だけ歯の破壊は進みます。

健康な歯を作るのは自分自身

病気になったらお医者さんに行く、病気は医者に直してもらう、と私たちは勘違いしがちです。でもこれは大間違い。病気を治すのも、健康を作るのも私たち自身です。歯医者はそれを助けることができるに過ぎません。虫歯を見つけるのではなく、虫歯をなくすためにどうしたらいいかを考えることが必要です。

詳しくは予防の項目を読んでいただくとして、大切なのは、甘いものを控えたり、毎食後歯磨きをしたりすることはもちろんですが、皆様が自分自身のからだに関心を持って、自分のからだを自分で管理する事の大切さを理解することです。

歯が悪くなった原因を見つける

また、もし病気が見つかったとしても、すぐに処置を行うのではなく、その原因を見つけアプローチすることで新たな病気の発症を抑える治療、そして治療を行うにしても必要最小限で、二次的な病気の発生を防ぐことを考慮に入れて行う。皆様が病気になって「患者さん」と呼ばれる前の健康なお口の維持安定のお手伝いをすること、すなわち病気を未然に予防し、健康な状態を維持する事が真の歯科医療であり私たちの考える「予防健康創成型の歯科医療」です。

個人によって治療のアプローチは違う

もちろん、歯磨きや定期検診は大切ですが、お口の環境や歯の状態はそれぞれ異なりますし、生活習慣やもともとのお口の素質によっても病気のリスクは異なります。だからこそ個人個人に適した対応が必要なのです。たとえば虫歯や歯周病は、細菌による感染症ですからその発症自体をコントロールすることは可能と思っています。

初期のむし歯は発見が難しい

歯は一度病気になってしまうと、ごく初期の状態以外は元に戻すことができません。ところが、ごく初期の状態の虫歯はほとんど自覚症状がなく、発見が難しいものです。歯周病はまるっきり自覚症状がないまま進行してしまいます。

虫歯は症状が進んでしまうと、悪い所を削り、金属や樹脂を詰めるといった処置をするしかありません。しかもそうした処置を受けた歯は、健康な歯よりも虫歯になりやすくなります。一度病気になってしまうと完治が不可能な歯であるからこそ、病気の発症を未然に防いで、健康な状態を維持するための予防健康創成型の歯科医療が大切なのです。

虫歯については詳しくは「虫歯は削って詰めても治らない」をお読みください。

歯周病については詳しくは「歯周治療」をお読みください。