毎日歯を磨く人は国民の96.2%

日本の虫歯予防は、これまで「砂糖ゼロ」、「食べたら歯磨き」、「早く見つけて早く治療」を三本柱にしてきました。ちなみに日本の砂糖消費量は世界143ヵ国の中で85位。欧米諸国に比べると極端に少ないのです。では歯を磨いていないのでしょうか?厚生省の調査では、毎日歯を磨く人は国民の96.2%。こんなにきれい好きの国民も珍しいのです。ではどこに問題があるのでしょうか?

悪くなったら治療する

スウェーデンでは、19歳のDMFS(一人平均の虫歯のある面数と詰めた歯面数、抜いた歯の合計)は3.6、虫歯ゼロの人は全体の22.3%。これに対して日本は悪い歯を歯面でなく本数で数えても9.2、虫歯ゼロはなんと4%です。日本に歯医者が少なくて治療が行き届かないわけではありません。現実は反対に悪くなったら治療することで歯が雪だるま式に悪くなってしまうのです。

厚生省の調査では30~34歳でDMFT(一人平均の虫歯、詰めた歯、抜けた歯の本数)が13.7、40~44歳で15.6、年を重ねるごとに歯を失い、50歳でまともな歯は、4割しかないというのが実情です。

初期のむし歯なら治ります

以前、虫歯は削らなければ治らないものと考えられていました。だから小さな虫歯を早く見つけて小さなうちに削って詰めてしまっていたのです。虫歯になりそうな部分まで余分に削って詰めてしまう治療も珍しくなく、それが正しい治療として認識されていました。虫歯も本当に初期であれば治ります。この場合削るのではなく、虫歯の原因除去療法が行われます。

虫歯を防ぐ唾液

歯は唾液の中で、ミネラルを吸ったり出したりしています。ここに強い酸を大量に作る細菌、そして細菌が酸を作るための栄養が加わると状況が変わります。細菌が歯の表面につくるプラークの中では酸が作られ、歯のミネラルが一方的に溶け出してしまうのです。これが歯の一部が白く濁った状態、深い溝が褐色になることもあります。虫歯を防ぐ一番大きな力を持っているのは唾液です。唾液の力が及ばないと甘いおやつを控えて、歯磨きをしていても虫歯になってしまうのです。唾液には食物を洗い流す働きのほか、細菌の増加を抑える力があり、虫歯の細菌が出す酸を中和してくれます。さらにたっぷりとミネラルを含んでいるので、歯が失ったミネラルを再び取り戻してくれます。

唾液の作用が及ばないところ

とはいっても、唾液の作用が及ばないところもあります。歯の耐酸性が特に低い場合、たとえば子供の乳歯や生えたばかりの永久歯、削って詰めた歯、被せた歯、歯肉が下がった歯はフッ素の助けが必要です。

この他、細菌を減らし酸を作らせないためには、食べ物や食べ方に気をつけること、歯を磨くことももちろん大切です。

このように虫歯は急いで詰めるよりも、可能な状況であれば歯を削るのでなく、虫歯のできやすい環境を改善することが効果的です。もし詰める処置が必要であっても、環境の改善があれば悪循環を防ぐことができます。

虫歯の原因菌

虫歯の原因菌は、砂糖を使ってネバネバしたノリのようなものと酸を作り、これらの働きで虫歯ができます。しかし逆に砂糖や炭水化物がなければ虫歯を起こす菌は酸を作れません。上手な甘いものの取り方を工夫しましょう。だらだら食べないこと、間食を減らすことも重要です。

酸を作らせない甘味料

キシリトールという言葉を聞いたこともある方も多いと思います。キシリトールは全く酸を作らせない甘味料です。しかも虫歯の原因菌に無駄働きをさせ数を減らしてしまう働きや、ネバネバを作らせない働きがありますので、上手に使うといいでしょう。